ホテルのWi-Fiが狙われています ― 出張前に知っておきたいこと
う~る
世界中のホテルや会議場の「フリーWi-Fi」が乗っ取られ、宿泊したビジネスマンのパソコンにウイルスを送り込む攻撃が確認されました。2026年7月31日、マイクロソフト社のセキュリティ調査チームが公表したものです。難しい話は抜きにして、何が起きているのかと今日からできることだけをお伝えします。
何が起きているのか
ホテルのWi-Fiにつなぐと、まず「ご利用規約に同意」「部屋番号を入力」といった画面が出てきますね。あの画面のしくみ(専門用語で「キャプティブポータル」といいます)が、攻撃者に乗っ取られています。
乗っ取られると何が起きるか。あなたのパソコンがインターネットに出ていく通り道そのものが、攻撃者の手の中になります。見ているサイトが勝手にすり替えられても、こちらからは気づけません。
今回やっかいなのは、被害が1軒2軒のホテルにとどまっていない点です。調査したチームは、被害を受けたホテルで使われているWi-Fi機器や管理システムに共通点があることを指摘しています。つまり、機器やサービスの提供元をまとめて狙われた可能性がある、ということです。
手口は「アップデートしてください」
Wi-Fiにつないだ直後、こんな画面が出ます。
更新プログラムをダウンロードしています
コンピューターの電源を切らないでください(38%)
実際に確認されている偽画面のイメージ。ブラウザの更新、セキュリティスキャン、ネットワーク診断ツールなど、複数の見た目が使い分けられています。
さらに手が込んでいるのが、「以下の文字をコピーして貼り付けてください」と作業を指示してくるタイプです。「自動修復に失敗しました。お手数ですが手動で実行してください」といった、いかにも本物らしい文面が添えられています。親切そうに見えますが、これはウイルスを自分の手で起動させるための指示です。
ホテルのWi-Fiにつないだ直後に出てくる「更新」「診断」「確認作業」は、すべて偽物とお考えください。
入ってしまうと何が盗まれるか
確認されているウイルスは、パソコンの中に居座り続けるタイプです。盗まれるものは、おおむね次のとおりです。
- ブラウザに保存したIDとパスワード
- ログイン済みの状態を保持している情報(パスワードを知らなくても、なりすまして入られます)
- Microsoft 365 のアカウント情報 ― メールや社内ファイルへの入口です
- キーボードで打った内容、画面の写し、カメラ・マイクの映像と音声
- パソコン内の書類ファイル、そして会社のWi-Fiのパスワード
最後の1つが特に重い意味を持ちます。出張先で感染したパソコンを持ち帰り、会社のネットワークにつなぐ。被害はホテルで終わらず、会社に入ってくるということです。
「うちみたいな会社は狙われない」は通用しません
今回の攻撃者はロシア政府系とみられており、狙いは政府機関や大企業です。ただし、待ち構えている場所は不特定多数が泊まるホテルです。誰が泊まるかを選んで仕掛けているわけではありません。そこに泊まれば、会社の規模に関係なく同じ画面が表示されます。
今日からできる5つのこと
- 出張先ではスマホのテザリングを使うこれが一番確実です。ホテルのWi-Fiを使わなければ、この攻撃には遭いません。
- Wi-Fi接続後に出てくる更新案内は、すべて無視する本物の更新はWindowsの設定画面から行うものです。Wi-Fiにつないだ瞬間には出てきません。
- 「コピーして貼り付けて実行」の指示には絶対に従わない正規のサービスが、利用者にこうした作業を求めることはありません。
- ホテルの会員登録に、会社のメールアドレスとパスワードを使い回さないWi-Fiの登録画面に会社のIDを入力するのも避けてください。
- パスワードだけに頼らない設定にしておくスマホでの本人確認(多要素認証)やパスキーを併用すると、情報が盗まれても入られにくくなります。
Microsoft 365 をお使いの企業さまへ
今回、正規のマイクロソフトのログイン画面を利用して、利用者に「コード」を入力させ、攻撃者側のログインを本人に承認させてしまう手口も確認されています。画面そのものは本物なので、見分けるのは困難です。
この手口は、管理者側の設定(条件付きアクセス)で、該当のログイン方式そのものを止めてしまうのが最も確実です。マイクロソフト社も、必要がなければ止めることを推奨しています。設定状況がご不明な場合は、弊社にてご確認いたします。
宿泊施設・会議施設をご運営のお客さまへ
お客さま用Wi-Fiの機器が古いまま、あるいは管理画面が外部から見える状態になっていないか、この機会に一度ご確認ください。被害に遭った施設は、宿泊客への加害者という立場にもなってしまいます。弊社にて点検を承ります。
出典
- Microsoft Threat Intelligence「CaptiveCrunch: Midnight Blizzard targets travelers worldwide for malware delivery and credential theft」Microsoft Security Blog、2026年7月31日
https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/07/31/captivecrunch-midnight-blizzard-targets-travelers-worldwide-for-malware-delivery-and-credential-theft/ - ReliaQuest「Threat Spotlight: DNS Poisoning Tactics Expand to Hospitality」2026年7月23日
https://reliaquest.com/blog/threat-spotlight-dns-poisoning-tactics-expand-to-hospitality/
本記事は、上記の公開情報をもとに、専門知識をお持ちでない方向けに株式会社アプトジャパンが要約・再構成したものです。通信先の情報(IoC)や検知用クエリなど、技術的な詳細は出典元をご参照ください。
「うちは大丈夫だろうか」と思われた方は、お気軽にご相談ください。
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